マタイ 2-23 - 口語訳聖書54/55年版
1
イエスがヘロデ王の代に、ユダヤのベツレヘムでお生れになったとき、見よ、東からきた博士たちがエルサレムに着いて言った、
2
「ユダヤ人の王としてお生れになったかたは、どこにおられますか。わたしたちは東の方でその星を見たので、そのかたを拝みにきました」。
3
ヘロデ王はこのことを聞いて不安を感じた。エルサレムの人々もみな、同様であった。
4
そこで王は祭司長たちと民の律法学者たちとを全部集めて、キリストはどこに生れるのかと、彼らに問いただした。
5
彼らは王に言った、「それはユダヤのベツレヘムです。預言者がこうしるしています、
6
『ユダの地、ベツレヘムよ、おまえはユダの君たちの中で、決して最も小さいものではない。おまえの中からひとりの君が出て、わが民イスラエルの牧者となるであろう』」。
7
そこで、ヘロデはひそかに博士たちを呼んで、星の現れた時について詳しく聞き、
8
彼らをベツレヘムにつかわして言った、「行って、その幼な子のことを詳しく調べ、見つかったらわたしに知らせてくれ。わたしも拝みに行くから」。
9
彼らは王の言うことを聞いて出かけると、見よ、彼らが東方で見た星が、彼らより先に進んで、幼な子のいる所まで行き、その上にとどまった。
10
彼らはその星を見て、非常な喜びにあふれた。
11
そして、家にはいって、母マリヤのそばにいる幼な子に会い、ひれ伏して拝み、また、宝の箱をあけて、黄金・乳香・没薬などの贈り物をささげた。
12
そして、夢でヘロデのところに帰るなとのみ告げを受けたので、他の道をとおって自分の国へ帰って行った。
13
彼らが帰って行ったのち、見よ、主の使が夢でヨセフに現れて言った、「立って、幼な子とその母を連れて、エジプトに逃げなさい。そして、あなたに知らせるまで、そこにとどまっていなさい。ヘロデが幼な子を捜し出して、殺そうとしている」。
14
そこで、ヨセフは立って、夜の間に幼な子とその母とを連れてエジプトへ行き、
15
ヘロデが死ぬまでそこにとどまっていた。それは、主が預言者によって「エジプトからわが子を呼び出した」と言われたことが、成就するためである。
16
さて、ヘロデは博士たちにだまされたと知って、非常に立腹した。そして人々をつかわし、博士たちから確かめた時に基いて、ベツレヘムとその附近の地方とにいる二歳以下の男の子を、ことごとく殺した。
17
こうして、預言者エレミヤによって言われたことが、成就したのである。
18
「叫び泣く大いなる悲しみの声がラマで聞えた。ラケルはその子らのためになげいた。子らがもはやいないので、慰められることさえ願わなかった」。
19
さて、ヘロデが死んだのち、見よ、主の使がエジプトにいるヨセフに夢で現れて言った、
20
「立って、幼な子とその母を連れて、イスラエルの地に行け。幼な子の命をねらっていた人々は、死んでしまった」。
21
そこでヨセフは立って、幼な子とその母とを連れて、イスラエルの地に帰った。
22
しかし、アケラオがその父ヘロデに代ってユダヤを治めていると聞いたので、そこへ行くことを恐れた。そして夢でみ告げを受けたので、ガリラヤの地方に退き、ナザレという町に行って住んだ。これは預言者たちによって、「彼はナザレ人と呼ばれるであろう」と言われたことが、成就するためである。
23
ナザレという町に行って住んだ。これは預言者たちによって、「彼はナザレ人と呼ばれるであろう」と言われたことが、成就するためである。

マタイ 3
1
そのころ、バプテスマのヨハネが現れ、ユダヤの荒野で教を宣べて言った、
2
「悔い改めよ、天国は近づいた」。
3
預言者イザヤによって、「荒野で呼ばわる者の声がする、『主の道を備えよ、その道筋をまっすぐにせよ』」と言われたのは、この人のことである。
4
このヨハネは、らくだの毛ごろもを着物にし、腰に皮の帯をしめ、いなごと野蜜とを食物としていた。
5
すると、エルサレムとユダヤ全土とヨルダン附近一帯の人々が、ぞくぞくとヨハネのところに出てきて、
6
自分の罪を告白し、ヨルダン川でヨハネからバプテスマを受けた。
7
ヨハネは、パリサイ人やサドカイ人が大ぜいバプテスマを受けようとしてきたのを見て、彼らに言った、「まむしの子らよ、迫ってきている神の怒りから、おまえたちはのがれられると、だれが教えたのか。
8
だから、悔改めにふさわしい実を結べ。
9
自分たちの父にはアブラハムがあるなどと、心の中で思ってもみるな。おまえたちに言っておく、神はこれらの石ころからでも、アブラハムの子を起すことができるのだ。
10
斧がすでに木の根もとに置かれている。だから、良い実を結ばない木はことごとく切られて、火の中に投げ込まれるのだ。
11
わたしは悔改めのために、水でおまえたちにバプテスマを授けている。しかし、わたしのあとから来る人はわたしよりも力のあるかたで、わたしはそのくつをぬがせてあげる値うちもない。このかたは、聖霊と火とによっておまえたちにバプテスマをお授けになるであろう。
12
また、箕を手に持って、打ち場の麦をふるい分け、麦は倉に納め、からは消えない火で焼き捨てるであろう」。
13
そのときイエスは、ガリラヤを出てヨルダン川に現れ、ヨハネのところにきて、バプテスマを受けようとされた。
14
ところがヨハネは、それを思いとどまらせようとして言った、「わたしこそあなたからバプテスマを受けるはずですのに、あなたがわたしのところにおいでになるのですか」。
15
しかし、イエスは答えて言われた、「今は受けさせてもらいたい。このように、すべての正しいことを成就するのは、われわれにふさわしいことである」。そこでヨハネはイエスの言われるとおりにした。
16
イエスはバプテスマを受けるとすぐ、水から上がられた。すると、見よ、天が開け、神の御霊がはとのように自分の上に下ってくるのを、ごらんになった。また天から声があって言った、「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。
17
また天から声があって言った、「これはわたしの愛する子、わたしの心にかなう者である」。

マタイ 4
1
さて、イエスは御霊によって荒野に導かれた。悪魔に試みられるためである。
2
そして、四十日四十夜、断食をし、そののち空腹になられた。
3
すると試みる者がきて言った、「もしあなたが神の子であるなら、これらの石がパンになるように命じてごらんなさい」。
4
イエスは答えて言われた、「『人はパンだけで生きるものではなく、神の口から出る一つ一つの言で生きるものである』と書いてある」。
5
それから悪魔は、イエスを聖なる都に連れて行き、宮の頂上に立たせて
6
言った、「もしあなたが神の子であるなら、下へ飛びおりてごらんなさい。『神はあなたのために御使たちにお命じになると、あなたの足が石に打ちつけられないように、彼らはあなたを手でささえるであろう』と書いてありますから」。
7
イエスは彼に言われた、「『主なるあなたの神を試みてはならない』とまた書いてある」。
8
次に悪魔は、イエスを非常に高い山に連れて行き、この世のすべての国々とその栄華とを見せて
9
言った、「もしあなたが、ひれ伏してわたしを拝むなら、これらのものを皆あなたにあげましょう」。
10
するとイエスは彼に言われた、「サタンよ、退け。『主なるあなたの神を拝し、ただ神にのみ仕えよ』と書いてある」。
11
そこで、悪魔はイエスを離れ去り、そして、御使たちがみもとにきて仕えた。
12
さて、イエスはヨハネが捕えられたと聞いて、ガリラヤへ退かれた。
13
そしてナザレを去り、ゼブルンとナフタリとの地方にある海べの町カペナウムに行って住まわれた。
14
これは預言者イザヤによって言われた言が、成就するためである。
15
「ゼブルンの地、ナフタリの地、海に沿う地方、ヨルダンの向こうの地、異邦人のガリラヤ、
16
暗黒の中に住んでいる民は大いなる光を見、死の地、死の陰に住んでいる人々に、光がのぼった」。
17
この時からイエスは教を宣べはじめて言われた、「悔い改めよ、天国は近づいた」。
18
さて、イエスがガリラヤの海べを歩いておられると、ふたりの兄弟、すなわち、ペテロと呼ばれたシモンとその兄弟アンデレとが、海に網を打っているのをごらんになった。彼らは漁師であった。
19
イエスは彼らに言われた、「わたしについてきなさい。あなたがたを、人間をとる漁師にしてあげよう」。
20
すると、彼らはすぐに網を捨てて、イエスに従った。
21
そこから進んで行かれると、ほかのふたりの兄弟、すなわち、ゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネとが、父ゼベダイと一緒に、舟の中で網を繕っているのをごらんになった。そこで彼らをお招きになると、
22
すぐ舟と父とをおいて、イエスに従って行った。
23
イエスはガリラヤの全地を巡り歩いて、諸会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、民の中のあらゆる病気、あらゆるわずらいをおいやしになった。
24
そこで、その評判はシリヤ全地にひろまり、人々があらゆる病にかかっている者、すなわち、いろいろの病気と苦しみとに悩んでいる者、悪霊につかれている者、てんかん、中風の者などをイエスのところに連れてきたので、これらの人々をおいやしになった。こうして、ガリラヤ、デカポリス、エルサレム、ユダヤ及びヨルダンの向こうから、おびただしい群衆がきてイエスに従った。
25
こうして、ガリラヤ、デカポリス、エルサレム、ユダヤ及びヨルダンの向こうから、おびただしい群衆がきてイエスに従った。

マタイ 5
1
イエスはこの群衆を見て、山に登り、座につかれると、弟子たちがみもとに近寄ってきた。
2
そこで、イエスは口を開き、彼らに教えて言われた。
3
「こころの貧しい人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。
4
悲しんでいる人たちは、さいわいである、彼らは慰められるであろう。
5
柔和な人たちは、さいわいである、彼らは地を受けつぐであろう。
6
義に飢えかわいている人たちは、さいわいである、彼らは飽き足りるようになるであろう。
7
あわれみ深い人たちは、さいわいである、彼らはあわれみを受けるであろう。
8
心の清い人たちは、さいわいである、彼らは神を見るであろう。
9
平和をつくり出す人たちは、さいわいである、彼らは神の子と呼ばれるであろう。
10
義のために迫害されてきた人たちは、さいわいである、天国は彼らのものである。
11
わたしのために人々があなたがたをののしり、また迫害し、あなたがたに対し偽って様々の悪口を言う時には、あなたがたは、さいわいである。
12
喜び、よろこべ、天においてあなたがたの受ける報いは大きい。あなたがたより前の預言者たちも、同じように迫害されたのである。
13
あなたがたは、地の塩である。もし塩のききめがなくなったら、何によってその味が取りもどされようか。もはや、なんの役にも立たず、ただ外に捨てられて、人々にふみつけられるだけである。
14
あなたがたは、世の光である。山の上にある町は隠れることができない。
15
また、あかりをつけて、それを枡の下におく者はいない。むしろ燭台の上において、家の中のすべてのものを照させるのである。
16
そのように、あなたがたの光を人々の前に輝かし、そして、人々があなたがたのよいおこないを見て、天にいますあなたがたの父をあがめるようにしなさい。
17
わたしが律法や預言者を廃するためにきた、と思ってはならない。廃するためではなく、成就するためにきたのである。
18
よく言っておく。天地が滅び行くまでは、律法の一点、一画もすたることはなく、ことごとく全うされるのである。
19
それだから、これらの最も小さいいましめの一つでも破り、またそうするように人に教えたりする者は、天国で最も小さい者と呼ばれるであろう。しかし、これをおこないまたそう教える者は、天国で大いなる者と呼ばれるであろう。
20
わたしは言っておく。あなたがたの義が律法学者やパリサイ人の義にまさっていなければ、決して天国に、はいることはできない。
21
昔の人々に『殺すな。殺す者は裁判を受けねばならない』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
22
しかし、わたしはあなたがたに言う。兄弟に対して怒る者は、だれでも裁判を受けねばならない。兄弟にむかって愚か者と言う者は、議会に引きわたされるであろう。また、ばか者と言う者は、地獄の火に投げ込まれるであろう。
23
だから、祭壇に供え物をささげようとする場合、兄弟が自分に対して何かうらみをいだいていることを、そこで思い出したなら、
24
その供え物を祭壇の前に残しておき、まず行ってその兄弟と和解し、それから帰ってきて、供え物をささげることにしなさい。
25
あなたを訴える者と一緒に道を行く時には、その途中で早く仲直りをしなさい。そうしないと、その訴える者はあなたを裁判官にわたし、裁判官は下役にわたし、そして、あなたは獄に入れられるであろう。
26
よくあなたに言っておく。最後の一コドラントを支払ってしまうまでは、決してそこから出てくることはできない。
27
『姦淫するな』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
28
しかし、わたしはあなたがたに言う。だれでも、情欲をいだいて女を見る者は、心の中ですでに姦淫をしたのである。
29
もしあなたの右の目が罪を犯させるなら、それを抜き出して捨てなさい。五体の一部を失っても、全身が地獄に投げ入れられない方が、あなたにとって益である。
30
もしあなたの右の手が罪を犯させるなら、それを切って捨てなさい。五体の一部を失っても、全身が地獄に落ち込まない方が、あなたにとって益である。
31
また『妻を出す者は離縁状を渡せ』と言われている。
32
しかし、わたしはあなたがたに言う。だれでも、不品行以外の理由で自分の妻を出す者は、姦淫を行わせるのである。また出された女をめとる者も、姦淫を行うのである。
33
また昔の人々に『いつわり誓うな、誓ったことは、すべて主に対して果せ』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
34
しかし、わたしはあなたがたに言う。いっさい誓ってはならない。天をさして誓うな。そこは神の御座であるから。
35
また地をさして誓うな。そこは神の足台であるから。またエルサレムをさして誓うな。それは『大王の都』であるから。
36
また、自分の頭をさして誓うな。あなたは髪の毛一すじさえ、白くも黒くもすることができない。
37
あなたがたの言葉は、ただ、しかり、しかり、否、否、であるべきだ。それ以上に出ることは、悪から来るのである。
38
『目には目を、歯には歯を』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
39
しかし、わたしはあなたがたに言う。悪人に手向かうな。もし、だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬をも向けてやりなさい。
40
あなたを訴えて、下着を取ろうとする者には、上着をも与えなさい。
41
もし、だれかが、あなたをしいて一マイル行かせようとするなら、その人と共に二マイル行きなさい。
42
求める者には与え、借りようとする者を断るな。
43
『隣り人を愛し、敵を憎め』と言われていたことは、あなたがたの聞いているところである。
44
しかし、わたしはあなたがたに言う。敵を愛し、迫害する者のために祈れ。
45
こうして、天にいますあなたがたの父の子となるためである。天の父は、悪い者の上にも良い者の上にも、太陽をのぼらせ、正しい者にも正しくない者にも、雨を降らして下さるからである。
46
あなたがたが自分を愛する者を愛したからとて、なんの報いがあろうか。そのようなことは取税人でもするではないか。
47
兄弟だけにあいさつをしたからとて、なんのすぐれた事をしているだろうか。そのようなことは異邦人でもしているではないか。それだから、あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者となりなさい。
48
それだから、あなたがたの天の父が完全であられるように、あなたがたも完全な者となりなさい。

マタイ 6
1
自分の義を、見られるために人の前で行わないように、注意しなさい。もし、そうしないと、天にいますあなたがたの父から報いを受けることがないであろう。
2
だから、施しをする時には、偽善者たちが人にほめられるため会堂や町の中でするように、自分の前でラッパを吹きならすな。よく言っておくが、彼らはその報いを受けてしまっている。
3
あなたは施しをする場合、右の手のしていることを左の手に知らせるな。
4
それは、あなたのする施しが隠れているためである。すると、隠れた事を見ておられるあなたの父は、報いてくださるであろう。
5
また祈る時には、偽善者たちのようにするな。彼らは人に見せようとして、会堂や大通りのつじに立って祈ることを好む。よく言っておくが、彼らはその報いを受けてしまっている。
6
あなたは祈る時、自分のへやにはいり、戸を閉じて、隠れた所においでになるあなたの父に祈りなさい。すると、隠れた事を見ておられるあなたの父は、報いてくださるであろう。
7
また、祈る場合、異邦人のように、くどくどと祈るな。彼らは言葉かずが多ければ、聞きいれられるものと思っている。
8
だから、彼らのまねをするな。あなたがたの父なる神は、求めない先から、あなたがたに必要なものはご存じなのである。
9
だから、あなたがたはこう祈りなさい、天にいますわれらの父よ、御名があがめられますように。
10
御国がきますように。みこころが天に行われるとおり、地にも行われますように。
11
わたしたちの日ごとの食物を、きょうもお与えください。
12
わたしたちに負債のある者をゆるしましたように、わたしたちの負債をもおゆるしください。
13
わたしたちを試みに会わせないで、悪しき者からお救いください。
14
もしも、あなたがたが、人々のあやまちをゆるすならば、あなたがたの天の父も、あなたがたをゆるして下さるであろう。
15
もし人をゆるさないならば、あなたがたの父も、あなたがたのあやまちをゆるして下さらないであろう。
16
また断食をする時には、偽善者がするように、陰気な顔つきをするな。彼らは断食をしていることを人に見せようとして、自分の顔を見苦しくするのである。よく言っておくが、彼らはその報いを受けてしまっている。
17
あなたがたは断食をする時には、自分の頭に油を塗り、顔を洗いなさい。
18
それは断食をしていることが人に知れないで、隠れた所においでになるあなたの父に知られるためである。すると、隠れた事を見ておられるあなたの父は、報いて下さるであろう。
19
あなたがたは自分のために、虫が食い、さびがつき、また、盗人らが押し入って盗み出すような地上に、宝をたくわえてはならない。
20
むしろ自分のため、虫も食わず、さびもつかず、また、盗人らが押し入って盗み出すこともない天に、宝をたくわえなさい。
21
あなたの宝のある所には、心もあるからである。
22
目はからだのあかりである。だから、あなたの目が澄んでおれば、全身も明るいだろう。
23
しかし、あなたの目が悪ければ、全身も暗いだろう。だから、もしあなたの内なる光が暗ければ、その暗さは、どんなであろう。
24
だれも、ふたりの主人に兼ね仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛し、あるいは、一方に親しんで他方をうとんじるからである。あなたがたは、神と富とに兼ね仕えることはできない。
25
それだから、あなたがたに言っておく。何を食べようか、何を飲もうかと、自分の命のことで思いわずらい、何を着ようかと自分のからだのことで思いわずらうな。命は食物にまさり、からだは着物にまさるではないか。
26
空の鳥を見るがよい。まくことも、刈ることもせず、倉に取りいれることもしない。それだのに、あなたがたの天の父は彼らを養っていて下さる。あなたがたは彼らよりも、はるかにすぐれた者ではないか。
27
あなたがたのうち、だれが思いわずらったからとて、自分の寿命をわずかでも延ばすことができようか。
28
また、なぜ、着物のことで思いわずらうのか。野の花がどうして育っているか、考えて見るがよい。働きもせず、紡ぎもしない。
29
しかし、あなたがたに言うが、栄華をきわめた時のソロモンでさえ、この花の一つほどにも着飾ってはいなかった。
30
きょうは生えていて、あすは炉に投げ入れられる野の草でさえ、神はこのように装って下さるのなら、あなたがたに、それ以上よくしてくださらないはずがあろうか。ああ、信仰の薄い者たちよ。
31
だから、何を食べようか、何を飲もうか、あるいは何を着ようかと言って思いわずらうな。
32
これらのものはみな、異邦人が切に求めているものである。あなたがたの天の父は、これらのものが、ことごとくあなたがたに必要であることをご存じである。
33
まず神の国と神の義とを求めなさい。そうすれば、これらのものは、すべて添えて与えられるであろう。だから、あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である。
34
だから、あすのことを思いわずらうな。あすのことは、あす自身が思いわずらうであろう。一日の苦労は、その日一日だけで十分である。

マタイ 7
1
人をさばくな。自分がさばかれないためである。
2
あなたがたがさばくそのさばきで、自分もさばかれ、あなたがたの量るそのはかりで、自分にも量り与えられるであろう。
3
なぜ、兄弟の目にあるちりを見ながら、自分の目にある梁を認めないのか。
4
自分の目には梁があるのに、どうして兄弟にむかって、あなたの目からちりを取らせてください、と言えようか。
5
偽善者よ、まず自分の目から梁を取りのけるがよい。そうすれば、はっきり見えるようになって、兄弟の目からちりを取りのけることができるだろう。
6
聖なるものを犬にやるな。また真珠を豚に投げてやるな。恐らく彼らはそれらを足で踏みつけ、向きなおってあなたがたにかみついてくるであろう。
7
求めよ、そうすれば、与えられるであろう。捜せ、そうすれば、見いだすであろう。門をたたけ、そうすれば、あけてもらえるであろう。
8
すべて求める者は得、捜す者は見いだし、門をたたく者はあけてもらえるからである。
9
あなたがたのうちで、自分の子がパンを求めるのに、石を与える者があろうか。
10
魚を求めるのに、へびを与える者があろうか。
11
このように、あなたがたは悪い者であっても、自分の子供には、良い贈り物をすることを知っているとすれば、天にいますあなたがたの父はなおさら、求めてくる者に良いものを下さらないことがあろうか。
12
だから、何事でも人々からしてほしいと望むことは、人々にもそのとおりにせよ。これが律法であり預言者である。
13
狭い門からはいれ。滅びにいたる門は大きく、その道は広い。そして、そこからはいって行く者が多い。
14
命にいたる門は狭く、その道は細い。そして、それを見いだす者が少ない。
15
にせ預言者を警戒せよ。彼らは、羊の衣を着てあなたがたのところに来るが、その内側は強欲なおおかみである。
16
あなたがたは、その実によって彼らを見わけるであろう。茨からぶどうを、あざみからいちじくを集める者があろうか。
17
そのように、すべて良い木は良い実を結び、悪い木は悪い実を結ぶ。
18
良い木が悪い実をならせることはないし、悪い木が良い実をならせることはできない。
19
良い実を結ばない木はことごとく切られて、火の中に投げ込まれる。
20
このように、あなたがたはその実によって彼らを見わけるのである。
21
わたしにむかって『主よ、主よ』と言う者が、みな天国にはいるのではなく、ただ、天にいますわが父の御旨を行う者だけが、はいるのである。
22
その日には、多くの者が、わたしにむかって『主よ、主よ、わたしたちはあなたの名によって預言したではありませんか。また、あなたの名によって悪霊を追い出し、あなたの名によって多くの力あるわざを行ったではありませんか』と言うであろう。
23
そのとき、わたしは彼らにはっきり、こう言おう、『あなたがたを全く知らない。不法を働く者どもよ、行ってしまえ』。
24
それで、わたしのこれらの言葉を聞いて行うものを、岩の上に自分の家を建てた賢い人に比べることができよう。
25
雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけても、倒れることはない。岩を土台としているからである。
26
また、わたしのこれらの言葉を聞いても行わない者を、砂の上に自分の家を建てた愚かな人に比べることができよう。
27
雨が降り、洪水が押し寄せ、風が吹いてその家に打ちつけると、倒れてしまう。そしてその倒れ方はひどいのである」。
28
イエスがこれらの言を語り終えられると、群衆はその教にひどく驚いた。それは律法学者たちのようにではなく、権威ある者のように、教えられたからである。
29
それは律法学者たちのようにではなく、権威ある者のように、教えられたからである。

マタイ 8
1
イエスが山をお降りになると、おびただしい群衆がついてきた。
2
すると、そのとき、ひとりのらい病人がイエスのところにきて、ひれ伏して言った、「主よ、みこころでしたら、きよめていただけるのですが」。
3
イエスは手を伸ばして、彼にさわり、「そうしてあげよう、きよくなれ」と言われた。すると、らい病は直ちにきよめられた。
4
イエスは彼に言われた、「だれにも話さないように、注意しなさい。ただ行って、自分のからだを祭司に見せ、それから、モーセが命じた供え物をささげて、人々に証明しなさい」。
5
さて、イエスがカペナウムに帰ってこられたとき、ある百卒長がみもとにきて訴えて言った、
6
「主よ、わたしの僕が中風でひどく苦しんで、家に寝ています」。
7
イエスは彼に、「わたしが行ってなおしてあげよう」と言われた。
8
そこで百卒長は答えて言った、「主よ、わたしの屋根の下にあなたをお入れする資格は、わたしにはございません。ただ、お言葉を下さい。そうすれば僕はなおります。
9
わたしも権威の下にある者ですが、わたしの下にも兵卒がいまして、ひとりの者に『行け』と言えば行き、ほかの者に『こい』と言えばきますし、また、僕に『これをせよ』と言えば、してくれるのです」。
10
イエスはこれを聞いて非常に感心され、ついてきた人々に言われた、「よく聞きなさい。イスラエル人の中にも、これほどの信仰を見たことがない。
11
なお、あなたがたに言うが、多くの人が東から西からきて、天国で、アブラハム、イサク、ヤコブと共に宴会の席につくが、
12
この国の子らは外のやみに追い出され、そこで泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう」。
13
それからイエスは百卒長に「行け、あなたの信じたとおりになるように」と言われた。すると、ちょうどその時に、僕はいやされた。
14
それから、イエスはペテロの家にはいって行かれ、そのしゅうとめが熱病で、床についているのをごらんになった。
15
そこで、その手にさわられると、熱が引いた。そして女は起きあがってイエスをもてなした。
16
夕暮になると、人々は悪霊につかれた者を大ぜい、みもとに連れてきたので、イエスはみ言葉をもって霊どもを追い出し、病人をことごとくおいやしになった。
17
これは、預言者イザヤによって「彼は、わたしたちのわずらいを身に受け、わたしたちの病を負うた」と言われた言葉が成就するためである。
18
イエスは、群衆が自分のまわりに群がっているのを見て、向こう岸に行くようにと弟子たちにお命じになった。
19
するとひとりの律法学者が近づいてきて言った、「先生、あなたがおいでになる所なら、どこへでも従ってまいります」。
20
イエスはその人に言われた、「きつねには穴があり、空の鳥には巣がある。しかし、人の子にはまくらする所がない」。
21
また弟子のひとりが言った、「主よ、まず、父を葬りに行かせて下さい」。
22
イエスは彼に言われた、「わたしに従ってきなさい。そして、その死人を葬ることは、死人に任せておくがよい」。
23
それから、イエスが舟に乗り込まれると、弟子たちも従った。
24
すると突然、海上に激しい暴風が起って、舟は波にのまれそうになった。ところが、イエスは眠っておられた。
25
そこで弟子たちはみそばに寄ってきてイエスを起し、「主よ、お助けください、わたしたちは死にそうです」と言った。
26
するとイエスは彼らに言われた、「なぜこわがるのか、信仰の薄い者たちよ」。それから起きあがって、風と海とをおしかりになると、大なぎになった。
27
彼らは驚いて言った、「このかたはどういう人なのだろう。風も海も従わせるとは」。
28
それから、向こう岸、ガダラ人の地に着かれると、悪霊につかれたふたりの者が、墓場から出てきてイエスに出会った。彼らは手に負えない乱暴者で、だれもその辺の道を通ることができないほどであった。
29
すると突然、彼らは叫んで言った、「神の子よ、あなたはわたしどもとなんの係わりがあるのです。まだその時ではないのに、ここにきて、わたしどもを苦しめるのですか」。
30
さて、そこからはるか離れた所に、おびただしい豚の群れが飼ってあった。
31
悪霊どもはイエスに願って言った、「もしわたしどもを追い出されるのなら、あの豚の群れの中につかわして下さい」。
32
そこで、イエスが「行け」と言われると、彼らは出て行って、豚の中へはいり込んだ。すると、その群れ全体が、がけから海へなだれを打って駆け下り、水の中で死んでしまった。
33
飼う者たちは逃げて町に行き、悪霊につかれた者たちのことなど、いっさいを知らせた。すると、町中の者がイエスに会いに出てきた。そして、イエスに会うと、この地方から去ってくださるようにと頼んだ。
34
すると、町中の者がイエスに会いに出てきた。そして、イエスに会うと、この地方から去ってくださるようにと頼んだ。

マタイ 9
1
さて、イエスは舟に乗って海を渡り、自分の町に帰られた。
2
すると、人々が中風の者を床の上に寝かせたままでみもとに運んできた。イエスは彼らの信仰を見て、中風の者に、「子よ、しっかりしなさい。あなたの罪はゆるされたのだ」と言われた。
3
すると、ある律法学者たちが心の中で言った、「この人は神を汚している」。
4
イエスは彼らの考えを見抜いて、「なぜ、あなたがたは心の中で悪いことを考えているのか。
5
あなたの罪はゆるされた、と言うのと、起きて歩け、と言うのと、どちらがたやすいか。
6
しかし、人の子は地上で罪をゆるす権威をもっていることが、あなたがたにわかるために」と言い、中風の者にむかって、「起きよ、床を取りあげて家に帰れ」と言われた。
7
すると彼は起きあがり、家に帰って行った。
8
群衆はそれを見て恐れ、こんな大きな権威を人にお与えになった神をあがめた。
9
さてイエスはそこから進んで行かれ、マタイという人が収税所にすわっているのを見て、「わたしに従ってきなさい」と言われた。すると彼は立ちあがって、イエスに従った。
10
それから、イエスが家で食事の席についておられた時のことである。多くの取税人や罪人たちがきて、イエスや弟子たちと共にその席に着いていた。
11
パリサイ人たちはこれを見て、弟子たちに言った、「なぜ、あなたがたの先生は、取税人や罪人などと食事を共にするのか」。
12
イエスはこれを聞いて言われた、「丈夫な人には医者はいらない。いるのは病人である。
13
『わたしが好むのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう意味か、学んできなさい。わたしがきたのは、義人を招くためではなく、罪人を招くためである」。
14
そのとき、ヨハネの弟子たちがイエスのところにきて言った、「わたしたちとパリサイ人たちとが断食をしているのに、あなたの弟子たちは、なぜ断食をしないのですか」。
15
するとイエスは言われた、「婚礼の客は、花婿が一緒にいる間は、悲しんでおられようか。しかし、花婿が奪い去られる日が来る。その時には断食をするであろう。
16
だれも、真新しい布ぎれで、古い着物につぎを当てはしない。そのつぎきれは着物を引き破り、そして、破れがもっとひどくなるから。
17
だれも、新しいぶどう酒を古い皮袋に入れはしない。もしそんなことをしたら、その皮袋は張り裂け、酒は流れ出るし、皮袋もむだになる。だから、新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れるべきである。そうすれば両方とも長もちがするであろう」。
18
これらのことを彼らに話しておられると、そこにひとりの会堂司がきて、イエスを拝して言った、「わたしの娘がただ今死にました。しかしおいでになって手をその上においてやって下さい。そうしたら、娘は生き返るでしょう」。
19
そこで、イエスが立って彼について行かれると、弟子たちも一緒に行った。
20
するとそのとき、十二年間も長血をわずらっている女が近寄ってきて、イエスのうしろからみ衣のふさにさわった。
21
み衣にさわりさえすれば、なおしていただけるだろう、と心の中で思っていたからである。
22
イエスは振り向いて、この女を見て言われた、「娘よ、しっかりしなさい。あなたの信仰があなたを救ったのです」。するとこの女はその時に、いやされた。
23
それからイエスは司の家に着き、笛吹きどもや騒いでいる群衆を見て言われた。
24
「あちらへ行っていなさい。少女は死んだのではない。眠っているだけである」。すると人々はイエスをあざ笑った。
25
しかし、群衆を外へ出したのち、イエスは内へはいって、少女の手をお取りになると、少女は起きあがった。
26
そして、そのうわさがこの地方全体にひろまった。
27
そこから進んで行かれると、ふたりの盲人が、「ダビデの子よ、わたしたちをあわれんで下さい」と叫びながら、イエスについてきた。
28
そしてイエスが家にはいられると、盲人たちがみもとにきたので、彼らに「わたしにそれができると信じるか」と言われた。彼らは言った、「主よ、信じます」。
29
そこで、イエスは彼らの目にさわって言われた、「あなたがたの信仰どおり、あなたがたの身になるように」。
30
すると彼らの目が開かれた。イエスは彼らをきびしく戒めて言われた、「だれにも知れないように気をつけなさい」。
31
しかし、彼らは出て行って、その地方全体にイエスのことを言いひろめた。
32
彼らが出て行くと、人々は悪霊につかれたおしをイエスのところに連れてきた。
33
すると、悪霊は追い出されて、おしが物を言うようになった。群衆は驚いて、「このようなことがイスラエルの中で見られたことは、これまで一度もなかった」と言った。
34
しかし、パリサイ人たちは言った、「彼は、悪霊どものかしらによって悪霊どもを追い出しているのだ」。
35
イエスは、すべての町々村々を巡り歩いて、諸会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、あらゆる病気、あらゆるわずらいをおいやしになった。
36
また群衆が飼う者のない羊のように弱り果てて、倒れているのをごらんになって、彼らを深くあわれまれた。
37
そして弟子たちに言われた、「収穫は多いが、働き人が少ない。だから、収穫の主に願って、その収穫のために働き人を送り出すようにしてもらいなさい」。
38
だから、収穫の主に願って、その収穫のために働き人を送り出すようにしてもらいなさい」。

マタイ 10
1
そこで、イエスは十二弟子を呼び寄せて、汚れた霊を追い出し、あらゆる病気、あらゆるわずらいをいやす権威をお授けになった。
2
十二使徒の名は、次のとおりである。まずペテロと呼ばれたシモンとその兄弟アンデレ、それからゼベダイの子ヤコブとその兄弟ヨハネ、
3
ピリポとバルトロマイ、トマスと取税人マタイ、アルパヨの子ヤコブとタダイ、
4
熱心党のシモンとイスカリオテのユダ。このユダはイエスを裏切った者である。
5
イエスはこの十二人をつかわすに当り、彼らに命じて言われた、「異邦人の道に行くな。またサマリヤ人の町にはいるな。
6
むしろ、イスラエルの家の失われた羊のところに行け。
7
行って、『天国が近づいた』と宣べ伝えよ。
8
病人をいやし、死人をよみがえらせ、らい病人をきよめ、悪霊を追い出せ。ただで受けたのだから、ただで与えるがよい。
9
財布の中に金、銀または銭を入れて行くな。
10
旅行のための袋も、二枚の下着も、くつも、つえも持って行くな。働き人がその食物を得るのは当然である。
11
どの町、どの村にはいっても、その中でだれがふさわしい人か、たずね出して、立ち去るまではその人のところにとどまっておれ。
12
その家にはいったなら、平安を祈ってあげなさい。
13
もし平安を受けるにふさわしい家であれば、あなたがたの祈る平安はその家に来るであろう。もしふさわしくなければ、その平安はあなたがたに帰って来るであろう。
14
もしあなたがたを迎えもせず、またあなたがたの言葉を聞きもしない人があれば、その家や町を立ち去る時に、足のちりを払い落しなさい。
15
あなたがたによく言っておく。さばきの日には、ソドム、ゴモラの地の方が、その町よりは耐えやすいであろう。
16
わたしがあなたがたをつかわすのは、羊をおおかみの中に送るようなものである。だから、へびのように賢く、はとのように素直であれ。
17
人々に注意しなさい。彼らはあなたがたを衆議所に引き渡し、会堂でむち打つであろう。
18
またあなたがたは、わたしのために長官たちや王たちの前に引き出されるであろう。それは、彼らと異邦人とに対してあかしをするためである。
19
彼らがあなたがたを引き渡したとき、何をどう言おうかと心配しないがよい。言うべきことは、その時に授けられるからである。
20
語る者は、あなたがたではなく、あなたがたの中にあって語る父の霊である。
21
兄弟は兄弟を、父は子を殺すために渡し、また子は親に逆らって立ち、彼らを殺させるであろう。
22
またあなたがたは、わたしの名のゆえにすべての人に憎まれるであろう。しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われる。
23
一つの町で迫害されたなら、他の町へ逃げなさい。よく言っておく。あなたがたがイスラエルの町々を回り終らないうちに、人の子は来るであろう。
24
弟子はその師以上のものではなく、僕はその主人以上の者ではない。
25
弟子がその師のようであり、僕がその主人のようであれば、それで十分である。もし家の主人がベルゼブルと言われるならば、その家の者どもはなおさら、どんなにか悪く言われることであろう。
26
だから彼らを恐れるな。おおわれたもので、現れてこないものはなく、隠れているもので、知られてこないものはない。
27
わたしが暗やみであなたがたに話すことを、明るみで言え。耳にささやかれたことを、屋根の上で言いひろめよ。
28
また、からだを殺しても、魂を殺すことのできない者どもを恐れるな。むしろ、からだも魂も地獄で滅ぼす力のあるかたを恐れなさい。
29
二羽のすずめは一アサリオンで売られているではないか。しかもあなたがたの父の許しがなければ、その一羽も地に落ちることはない。
30
またあなたがたの頭の毛までも、みな数えられている。
31
それだから、恐れることはない。あなたがたは多くのすずめよりも、まさった者である。
32
だから人の前でわたしを受けいれる者を、わたしもまた、天にいますわたしの父の前で受けいれるであろう。
33
しかし、人の前でわたしを拒む者を、わたしも天にいますわたしの父の前で拒むであろう。
34
地上に平和をもたらすために、わたしがきたと思うな。平和ではなく、つるぎを投げ込むためにきたのである。
35
わたしがきたのは、人をその父と、娘をその母と、嫁をそのしゅうとめと仲たがいさせるためである。
36
そして家の者が、その人の敵となるであろう。
37
わたしよりも父または母を愛する者は、わたしにふさわしくない。わたしよりもむすこや娘を愛する者は、わたしにふさわしくない。
38
また自分の十字架をとってわたしに従ってこない者はわたしにふさわしくない。
39
自分の命を得ている者はそれを失い、わたしのために自分の命を失っている者は、それを得るであろう。
40
あなたがたを受けいれる者は、わたしを受けいれるのである。わたしを受けいれる者は、わたしをおつかわしになったかたを受けいれるのである。
41
預言者の名のゆえに預言者を受けいれる者は、預言者の報いを受け、義人の名のゆえに義人を受けいれる者は、義人の報いを受けるであろう。わたしの弟子であるという名のゆえに、この小さい者のひとりに冷たい水一杯でも飲ませてくれる者は、よく言っておくが、決してその報いからもれることはない」。
42
わたしの弟子であるという名のゆえに、この小さい者のひとりに冷たい水一杯でも飲ませてくれる者は、よく言っておくが、決してその報いからもれることはない」。

マタイ 11
1
イエスは十二弟子にこのように命じ終えてから、町々で教えまた宣べ伝えるために、そこを立ち去られた。
2
さて、ヨハネは獄中でキリストのみわざについて伝え聞き、自分の弟子たちをつかわして、
3
イエスに言わせた、「『きたるべきかた』はあなたなのですか。それとも、ほかにだれかを待つべきでしょうか」。
4
イエスは答えて言われた、「行って、あなたがたが見聞きしていることをヨハネに報告しなさい。
5
盲人は見え、足なえは歩き、らい病人はきよまり、耳しいは聞え、死人は生きかえり、貧しい人々は福音を聞かされている。
6
わたしにつまずかない者は、さいわいである」。
7
彼らが帰ってしまうと、イエスはヨハネのことを群衆に語りはじめられた、「あなたがたは、何を見に荒野に出てきたのか。風に揺らぐ葦であるか。
8
では、何を見に出てきたのか。柔らかい着物をまとった人か。柔らかい着物をまとった人々なら、王の家にいる。
9
では、なんのために出てきたのか。預言者を見るためか。そうだ、あなたがたに言うが、預言者以上の者である。
10
『見よ、わたしは使をあなたの先につかわし、あなたの前に、道を整えさせるであろう』と書いてあるのは、この人のことである。
11
あなたがたによく言っておく。女の産んだ者の中で、バプテスマのヨハネより大きい人物は起らなかった。しかし、天国で最も小さい者も、彼よりは大きい。
12
バプテスマのヨハネの時から今に至るまで、天国は激しく襲われている。そして激しく襲う者たちがそれを奪い取っている。
13
すべての預言者と律法とが預言したのは、ヨハネの時までである。
14
そして、もしあなたがたが受けいれることを望めば、この人こそは、きたるべきエリヤなのである。
15
耳のある者は聞くがよい。
16
今の時代を何に比べようか。それは子供たちが広場にすわって、ほかの子供たちに呼びかけ、
17
『わたしたちが笛を吹いたのに、あなたたちは踊ってくれなかった。弔いの歌を歌ったのに、胸を打ってくれなかった』と言うのに似ている。
18
なぜなら、ヨハネがきて、食べることも、飲むこともしないと、あれは悪霊につかれているのだ、と言い、
19
また人の子がきて、食べたり飲んだりしていると、見よ、あれは食をむさぼる者、大酒を飲む者、また取税人、罪人の仲間だ、と言う。しかし、知恵の正しいことは、その働きが証明する」。
20
それからイエスは、数々の力あるわざがなされたのに、悔い改めることをしなかった町々を、責めはじめられた。
21
「わざわいだ、コラジンよ。わざわいだ、ベツサイダよ。おまえたちのうちでなされた力あるわざが、もしツロとシドンでなされたなら、彼らはとうの昔に、荒布をまとい灰をかぶって、悔い改めたであろう。
22
しかし、おまえたちに言っておく。さばきの日には、ツロとシドンの方がおまえたちよりも、耐えやすいであろう。
23
ああ、カペナウムよ、おまえは天にまで上げられようとでもいうのか。黄泉にまで落されるであろう。おまえの中でなされた力あるわざが、もしソドムでなされたなら、その町は今日までも残っていたであろう。
24
しかし、あなたがたに言う。さばきの日には、ソドムの地の方がおまえよりは耐えやすいであろう」。
25
そのときイエスは声をあげて言われた、「天地の主なる父よ。あなたをほめたたえます。これらの事を知恵のある者や賢い者に隠して、幼な子にあらわしてくださいました。
26
父よ、これはまことにみこころにかなった事でした。
27
すべての事は父からわたしに任せられています。そして、子を知る者は父のほかにはなく、父を知る者は、子と、父をあらわそうとして子が選んだ者とのほかに、だれもありません。
28
すべて重荷を負うて苦労している者は、わたしのもとにきなさい。あなたがたを休ませてあげよう。
29
わたしは柔和で心のへりくだった者であるから、わたしのくびきを負うて、わたしに学びなさい。そうすれば、あなたがたの魂に休みが与えられるであろう。わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからである」。
30
わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽いからである」。

マタイ 12
1
そのころ、ある安息日に、イエスは麦畑の中を通られた。すると弟子たちは、空腹であったので、穂を摘んで食べはじめた。
2
パリサイ人たちがこれを見て、イエスに言った、「ごらんなさい、あなたの弟子たちが、安息日にしてはならないことをしています」。
3
そこでイエスは彼らに言われた、「あなたがたは、ダビデとその供の者たちとが飢えたとき、ダビデが何をしたか読んだことがないのか。
4
すなわち、神の家にはいって、祭司たちのほか、自分も供の者たちも食べてはならぬ供えのパンを食べたのである。
5
また、安息日に宮仕えをしている祭司たちは安息日を破っても罪にはならないことを、律法で読んだことがないのか。
6
あなたがたに言っておく。宮よりも大いなる者がここにいる。
7
『わたしが好むのは、あわれみであって、いけにえではない』とはどういう意味か知っていたなら、あなたがたは罪のない者をとがめなかったであろう。
8
人の子は安息日の主である」。
9
イエスはそこを去って、彼らの会堂にはいられた。
10
すると、そのとき、片手のなえた人がいた。人々はイエスを訴えようと思って、「安息日に人をいやしても、さしつかえないか」と尋ねた。
11
イエスは彼らに言われた、「あなたがたのうちに、一匹の羊を持っている人があるとして、もしそれが安息日に穴に落ちこんだなら、手をかけて引き上げてやらないだろうか。
12
人は羊よりも、はるかにすぐれているではないか。だから、安息日に良いことをするのは、正しいことである」。
13
そしてイエスはその人に、「手を伸ばしなさい」と言われた。そこで手を伸ばすと、ほかの手のように良くなった。
14
パリサイ人たちは出て行って、なんとかしてイエスを殺そうと相談した。
15
イエスはこれを知って、そこを去って行かれた。ところが多くの人々がついてきたので、彼らを皆いやし、
16
そして自分のことを人々にあらわさないようにと、彼らを戒められた。
17
これは預言者イザヤの言った言葉が、成就するためである、
18
「見よ、わたしが選んだ僕、わたしの心にかなう、愛する者。わたしは彼にわたしの霊を授け、そして彼は正義を異邦人に宣べ伝えるであろう。
19
彼は争わず、叫ばず、またその声を大路で聞く者はない。
20
彼が正義に勝ちを得させる時まで、いためられた葦を折ることがなく、煙っている燈心を消すこともない。
21
異邦人は彼の名に望みを置くであろう」。
22
そのとき、人々が悪霊につかれた盲人のおしを連れてきたので、イエスは彼をいやして、物を言い、また目が見えるようにされた。
23
すると群衆はみな驚いて言った、「この人が、あるいはダビデの子ではあるまいか」。
24
しかし、パリサイ人たちは、これを聞いて言った、「この人が悪霊を追い出しているのは、まったく悪霊のかしらベルゼブルによるのだ」。
25
イエスは彼らの思いを見抜いて言われた、「おおよそ、内部で分れ争う国は自滅し、内わで分れ争う町や家は立ち行かない。
26
もしサタンがサタンを追い出すならば、それは内わで分れ争うことになる。それでは、その国はどうして立ち行けよう。
27
もしわたしがベルゼブルによって悪霊を追い出すとすれば、あなたがたの仲間はだれによって追い出すのであろうか。だから、彼らがあなたがたをさばく者となるであろう。
28
しかし、わたしが神の霊によって悪霊を追い出しているのなら、神の国はすでにあなたがたのところにきたのである。
29
まただれでも、まず強い人を縛りあげなければ、どうして、その人の家に押し入って家財を奪い取ることができようか。縛ってから、はじめてその家を掠奪することができる。
30
わたしの味方でない者は、わたしに反対するものであり、わたしと共に集めない者は、散らすものである。
31
だから、あなたがたに言っておく。人には、その犯すすべての罪も神を汚す言葉も、ゆるされる。しかし、聖霊を汚す言葉は、ゆるされることはない。
32
また人の子に対して言い逆らう者は、ゆるされるであろう。しかし、聖霊に対して言い逆らう者は、この世でも、きたるべき世でも、ゆるされることはない。
33
木が良ければ、その実も良いとし、木が悪ければ、その実も悪いとせよ。木はその実でわかるからである。
34
まむしの子らよ。あなたがたは悪い者であるのに、どうして良いことを語ることができようか。おおよそ、心からあふれることを、口が語るものである。
35
善人はよい倉から良い物を取り出し、悪人は悪い倉から悪い物を取り出す。
36
あなたがたに言うが、審判の日には、人はその語る無益な言葉に対して、言い開きをしなければならないであろう。
37
あなたは、自分の言葉によって正しいとされ、また自分の言葉によって罪ありとされるからである」。
38
そのとき、律法学者、パリサイ人のうちのある人々がイエスにむかって言った、「先生、わたしたちはあなたから、しるしを見せていただきとうございます」。
39
すると、彼らに答えて言われた、「邪悪で不義な時代は、しるしを求める。しかし、預言者ヨナのしるしのほかには、なんのしるしも与えられないであろう。
40
すなわち、ヨナが三日三晩、大魚の腹の中にいたように、人の子も三日三晩、地の中にいるであろう。
41
ニネベの人々が、今の時代の人々と共にさばきの場に立って、彼らを罪に定めるであろう。なぜなら、ニネベの人々はヨナの宣教によって悔い改めたからである。しかし見よ、ヨナにまさる者がここにいる。
42
南の女王が、今の時代の人々と共にさばきの場に立って、彼らを罪に定めるであろう。なぜなら、彼女はソロモンの知恵を聞くために地の果から、はるばるきたからである。しかし見よ、ソロモンにまさる者がここにいる。
43
汚れた霊が人から出ると、休み場を求めて水の無い所を歩きまわるが、見つからない。
44
そこで、出てきた元の家に帰ろうと言って帰って見ると、その家はあいていて、そうじがしてある上、飾りつけがしてあった。
45
そこでまた出て行って、自分以上に悪い他の七つの霊を一緒に引き連れてきて中にはいり、そこに住み込む。そうすると、その人ののちの状態は初めよりももっと悪くなるのである。よこしまな今の時代も、このようになるであろう」。
46
イエスがまだ群衆に話しておられるとき、その母と兄弟たちとが、イエスに話そうと思って外に立っていた。
47
それで、ある人がイエスに言った、「ごらんなさい。あなたの母上と兄弟がたが、あなたに話そうと思って、外に立っておられます」。
48
イエスは知らせてくれた者に答えて言われた、「わたしの母とは、だれのことか。わたしの兄弟とは、だれのことか」。
49
そして、弟子たちの方に手をさし伸べて言われた、「ごらんなさい。ここにわたしの母、わたしの兄弟がいる。天にいますわたしの父のみこころを行う者はだれでも、わたしの兄弟、また姉妹、また母なのである」。
50
天にいますわたしの父のみこころを行う者はだれでも、わたしの兄弟、また姉妹、また母なのである」。

マタイ 13
1
その日、イエスは家を出て、海べにすわっておられた。
2
ところが、大ぜいの群衆がみもとに集まったので、イエスは舟に乗ってすわられ、群衆はみな岸に立っていた。
3
イエスは譬で多くの事を語り、こう言われた、「見よ、種まきが種をまきに出て行った。
4
まいているうちに、道ばたに落ちた種があった。すると、鳥がきて食べてしまった。
5
ほかの種は土の薄い石地に落ちた。そこは土が深くないので、すぐ芽を出したが、
6
日が上ると焼けて、根がないために枯れてしまった。
7
ほかの種はいばらの地に落ちた。すると、いばらが伸びて、ふさいでしまった。
8
ほかの種は良い地に落ちて実を結び、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍にもなった。
9
耳のある者は聞くがよい」。
10
それから、弟子たちがイエスに近寄ってきて言った、「なぜ、彼らに譬でお話しになるのですか」。
11
そこでイエスは答えて言われた、「あなたがたには、天国の奥義を知ることが許されているが、彼らには許されていない。
12
おおよそ、持っている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、持っていない人は、持っているものまでも取り上げられるであろう。
13
だから、彼らには譬で語るのである。それは彼らが、見ても見ず、聞いても聞かず、また悟らないからである。
14
こうしてイザヤの言った預言が、彼らの上に成就したのである。『あなたがたは聞くには聞くが、決して悟らない。見るには見るが、決して認めない。
15
この民の心は鈍くなり、その耳は聞えにくく、その目は閉じている。それは、彼らが目で見ず、耳で聞かず、心で悟らず、悔い改めていやされることがないためである』。
16
しかし、あなたがたの目は見ており、耳は聞いているから、さいわいである。
17
あなたがたによく言っておく。多くの預言者や義人は、あなたがたの見ていることを見ようと熱心に願ったが、見ることができず、またあなたがたの聞いていることを聞こうとしたが、聞けなかったのである。
18
そこで、種まきの譬を聞きなさい。
19
だれでも御国の言を聞いて悟らないならば、悪い者がきて、その人の心にまかれたものを奪いとって行く。道ばたにまかれたものというのは、そういう人のことである。
20
石地にまかれたものというのは、御言を聞くと、すぐに喜んで受ける人のことである。
21
その中に根がないので、しばらく続くだけであって、御言のために困難や迫害が起ってくると、すぐつまずいてしまう。
22
また、いばらの中にまかれたものとは、御言を聞くが、世の心づかいと富の惑わしとが御言をふさぐので、実を結ばなくなる人のことである。
23
また、良い地にまかれたものとは、御言を聞いて悟る人のことであって、そういう人が実を結び、百倍、あるいは六十倍、あるいは三十倍にもなるのである」。
24
また、ほかの譬を彼らに示して言われた、「天国は、良い種を自分の畑にまいておいた人のようなものである。
25
人々が眠っている間に敵がきて、麦の中に毒麦をまいて立ち去った。
26
芽がはえ出て実を結ぶと、同時に毒麦もあらわれてきた。
27
僕たちがきて、家の主人に言った、『ご主人様、畑におまきになったのは、良い種ではありませんでしたか。どうして毒麦がはえてきたのですか』。
28
主人は言った、『それは敵のしわざだ』。すると僕たちが言った『では行って、それを抜き集めましょうか』。
29
彼は言った、『いや、毒麦を集めようとして、麦も一緒に抜くかも知れない。
30
収穫まで、両方とも育つままにしておけ。収穫の時になったら、刈る者に、まず毒麦を集めて束にして焼き、麦の方は集めて倉に入れてくれ、と言いつけよう』」。
31
また、ほかの譬を彼らに示して言われた、「天国は、一粒のからし種のようなものである。ある人がそれをとって畑にまくと、
32
それはどんな種よりも小さいが、成長すると、野菜の中でいちばん大きくなり、空の鳥がきて、その枝に宿るほどの木になる」。
33
またほかの譬を彼らに語られた、「天国は、パン種のようなものである。女がそれを取って三斗の粉の中に混ぜると、全体がふくらんでくる」。
34
イエスはこれらのことをすべて、譬で群衆に語られた。譬によらないでは何事も彼らに語られなかった。
35
これは預言者によって言われたことが、成就するためである、「わたしは口を開いて譬を語り、世の初めから隠されていることを語り出そう」。
36
それからイエスは、群衆をあとに残して家にはいられた。すると弟子たちは、みもとにきて言った、「畑の毒麦の譬を説明してください」。
37
イエスは答えて言われた、「良い種をまく者は、人の子である。
38
畑は世界である。良い種と言うのは御国の子たちで、毒麦は悪い者の子たちである。
39
それをまいた敵は悪魔である。収穫とは世の終りのことで、刈る者は御使たちである。
40
だから、毒麦が集められて火で焼かれるように、世の終りにもそのとおりになるであろう。
41
人の子はその使たちをつかわし、つまずきとなるものと不法を行う者とを、ことごとく御国からとり集めて、
42
炉の火に投げ入れさせるであろう。そこでは泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。
43
そのとき、義人たちは彼らの父の御国で、太陽のように輝きわたるであろう。耳のある者は聞くがよい。
44
天国は、畑に隠してある宝のようなものである。人がそれを見つけると隠しておき、喜びのあまり、行って持ち物をみな売りはらい、そしてその畑を買うのである。
45
また天国は、良い真珠を捜している商人のようなものである。
46
高価な真珠一個を見いだすと、行って持ち物をみな売りはらい、そしてこれを買うのである。
47
また天国は、海におろして、あらゆる種類の魚を囲みいれる網のようなものである。
48
それがいっぱいになると岸に引き上げ、そしてすわって、良いのを器に入れ、悪いのを外へ捨てるのである。
49
世の終りにも、そのとおりになるであろう。すなわち、御使たちがきて、義人のうちから悪人をえり分け、
50
そして炉の火に投げこむであろう。そこでは泣き叫んだり、歯がみをしたりするであろう。
51
あなたがたは、これらのことが皆わかったか」。彼らは「わかりました」と答えた。
52
そこで、イエスは彼らに言われた、「それだから、天国のことを学んだ学者は、新しいものと古いものとを、その倉から取り出す一家の主人のようなものである」。
53
イエスはこれらの譬を語り終えてから、そこを立ち去られた。
54
そして郷里に行き、会堂で人々を教えられたところ、彼らは驚いて言った、「この人は、この知恵とこれらの力あるわざとを、どこで習ってきたのか。
55
この人は大工の子ではないか。母はマリヤといい、兄弟たちは、ヤコブ、ヨセフ、シモン、ユダではないか。
56
またその姉妹たちもみな、わたしたちと一緒にいるではないか。こんな数々のことを、いったい、どこで習ってきたのか」。
57
こうして人々はイエスにつまずいた。しかし、イエスは言われた、「預言者は、自分の郷里や自分の家以外では、どこででも敬われないことはない」。そして彼らの不信仰のゆえに、そこでは力あるわざを、あまりなさらなかった。
58
そして彼らの不信仰のゆえに、そこでは力あるわざを、あまりなさらなかった。

マタイ 14
1
そのころ、領主ヘロデはイエスのうわさを聞いて、
2
家来に言った、「あれはバプテスマのヨハネだ。死人の中からよみがえったのだ。それで、あのような力が彼のうちに働いているのだ」。
3
というのは、ヘロデは先に、自分の兄弟ピリポの妻ヘロデヤのことで、ヨハネを捕えて縛り、獄に入れていた。
4
すなわち、ヨハネはヘロデに、「その女をめとるのは、よろしくない」と言ったからである。
5
そこでヘロデはヨハネを殺そうと思ったが、群衆を恐れた。彼らがヨハネを預言者と認めていたからである。
6
さてヘロデの誕生日の祝に、ヘロデヤの娘がその席上で舞をまい、ヘロデを喜ばせたので、
7
彼女の願うものは、なんでも与えようと、彼は誓って約束までした。
8
すると彼女は母にそそのかされて、「バプテスマのヨハネの首を盆に載せて、ここに持ってきていただきとうございます」と言った。
9
王は困ったが、いったん誓ったのと、また列座の人たちの手前、それを与えるように命じ、
10
人をつかわして、獄中でヨハネの首を切らせた。
11
その首は盆に載せて運ばれ、少女にわたされ、少女はそれを母のところに持って行った。
12
それから、ヨハネの弟子たちがきて、死体を引き取って葬った。そして、イエスのところに行って報告した。
13
イエスはこのことを聞くと、舟に乗ってそこを去り、自分ひとりで寂しい所へ行かれた。しかし、群衆はそれと聞いて、町々から徒歩であとを追ってきた。
14
イエスは舟から上がって、大ぜいの群衆をごらんになり、彼らを深くあわれんで、そのうちの病人たちをおいやしになった。
15
夕方になったので、弟子たちがイエスのもとにきて言った、「ここは寂しい所でもあり、もう時もおそくなりました。群衆を解散させ、めいめいで食物を買いに、村々へ行かせてください」。
16
するとイエスは言われた、「彼らが出かけて行くには及ばない。あなたがたの手で食物をやりなさい」。
17
弟子たちは言った、「わたしたちはここに、パン五つと魚二ひきしか持っていません」。
18
イエスは言われた、「それをここに持ってきなさい」。
19
そして群衆に命じて、草の上にすわらせ、五つのパンと二ひきの魚とを手に取り、天を仰いでそれを祝福し、パンをさいて弟子たちに渡された。弟子たちはそれを群衆に与えた。
20
みんなの者は食べて満腹した。パンくずの残りを集めると、十二のかごにいっぱいになった。
21
食べた者は、女と子供とを除いて、おおよそ五千人であった。
22
それからすぐ、イエスは群衆を解散させておられる間に、しいて弟子たちを舟に乗り込ませ、向こう岸へ先におやりになった。
23
そして群衆を解散させてから、祈るためひそかに山へ登られた。夕方になっても、ただひとりそこにおられた。
24
ところが舟は、もうすでに陸から数丁も離れており、逆風が吹いていたために、波に悩まされていた。
25
イエスは夜明けの四時ごろ、海の上を歩いて彼らの方へ行かれた。
26
弟子たちは、イエスが海の上を歩いておられるのを見て、幽霊だと言っておじ惑い、恐怖のあまり叫び声をあげた。
27
しかし、イエスはすぐに彼らに声をかけて、「しっかりするのだ、わたしである。恐れることはない」と言われた。
28
するとペテロが答えて言った、「主よ、あなたでしたか。では、わたしに命じて、水の上を渡ってみもとに行かせてください」。
29
イエスは、「おいでなさい」と言われたので、ペテロは舟からおり、水の上を歩いてイエスのところへ行った。
30
しかし、風を見て恐ろしくなり、そしておぼれかけたので、彼は叫んで、「主よ、お助けください」と言った。
31
イエスはすぐに手を伸ばし、彼をつかまえて言われた、「信仰の薄い者よ、なぜ疑ったのか」。
32
ふたりが舟に乗り込むと、風はやんでしまった。
33
舟の中にいた者たちはイエスを拝して、「ほんとうに、あなたは神の子です」と言った。
34
それから、彼らは海を渡ってゲネサレの地に着いた。
35
するとその土地の人々はイエスと知って、その附近全体に人をつかわし、イエスのところに病人をみな連れてこさせた。そして彼らにイエスの上着のふさにでも、さわらせてやっていただきたいとお願いした。そしてさわった者は皆いやされた。
36
そして彼らにイエスの上着のふさにでも、さわらせてやっていただきたいとお願いした。そしてさわった者は皆いやされた。

マタイ 15
1
ときに、パリサイ人と律法学者たちとが、エルサレムからイエスのもとにきて言った、
2
「あなたの弟子たちは、なぜ昔の人々の言伝えを破るのですか。彼らは食事の時に手を洗っていません」。
3
イエスは答えて言われた、「なぜ、あなたがたも自分たちの言伝えによって、神のいましめを破っているのか。
4
神は言われた、『父と母とを敬え』、また『父または母をののしる者は、必ず死に定められる』と。
5
それだのに、あなたがたは『だれでも父または母にむかって、あなたにさしあげるはずのこのものは供え物です、と言えば、
6
父または母を敬わなくてもよろしい』と言っている。こうしてあなたがたは自分たちの言伝えによって、神の言を無にしている。
7
偽善者たちよ、イザヤがあなたがたについて、こういう適切な預言をしている、
8
『この民は、口さきではわたしを敬うが、その心はわたしから遠く離れている。
9
人間のいましめを教として教え、無意味にわたしを拝んでいる』」。
10
それからイエスは群衆を呼び寄せて言われた、「聞いて悟るがよい。
11
口にはいるものは人を汚すことはない。かえって、口から出るものが人を汚すのである」。
12
そのとき、弟子たちが近寄ってきてイエスに言った、「パリサイ人たちが御言を聞いてつまずいたことを、ご存じですか」。
13
イエスは答えて言われた、「わたしの天の父がお植えにならなかったものは、みな抜き取られるであろう。
14
彼らをそのままにしておけ。彼らは盲人を手引きする盲人である。もし盲人が盲人を手引きするなら、ふたりとも穴に落ち込むであろう」。
15
ペテロが答えて言った、「その譬を説明してください」。
16
イエスは言われた、「あなたがたも、まだわからないのか。
17
口にはいってくるものは、みな腹の中にはいり、そして、外に出て行くことを知らないのか。
18
しかし、口から出て行くものは、心の中から出てくるのであって、それが人を汚すのである。
19
というのは、悪い思い、すなわち、殺人、姦淫、不品行、盗み、偽証、誹りは、心の中から出てくるのであって、
20
これらのものが人を汚すのである。しかし、洗わない手で食事することは、人を汚すのではない」。
21
さて、イエスはそこを出て、ツロとシドンとの地方へ行かれた。
22
すると、そこへ、その地方出のカナンの女が出てきて、「主よ、ダビデの子よ、わたしをあわれんでください。娘が悪霊にとりつかれて苦しんでいます」と言って叫びつづけた。
23
しかし、イエスはひと言もお答えにならなかった。そこで弟子たちがみもとにきて願って言った、「この女を追い払ってください。叫びながらついてきていますから」。
24
するとイエスは答えて言われた、「わたしは、イスラエルの家の失われた羊以外の者には、つかわされていない」。
25
しかし、女は近寄りイエスを拝して言った、「主よ、わたしをお助けください」。
26
イエスは答えて言われた、「子供たちのパンを取って小犬に投げてやるのは、よろしくない」。
27
すると女は言った、「主よ、お言葉どおりです。でも、小犬もその主人の食卓から落ちるパンくずは、いただきます」。
28
そこでイエスは答えて言われた、「女よ、あなたの信仰は見あげたものである。あなたの願いどおりになるように」。その時に、娘はいやされた。
29
イエスはそこを去って、ガリラヤの海べに行き、それから山に登ってそこにすわられた。
30
すると大ぜいの群衆が、足なえ、不具者、盲人、おし、そのほか多くの人々を連れてきて、イエスの足もとに置いたので、彼らをおいやしになった。
31
群衆は、おしが物を言い、不具者が直り、足なえが歩き、盲人が見えるようになったのを見て驚き、そしてイスラエルの神をほめたたえた。
32
イエスは弟子たちを呼び寄せて言われた、「この群衆がかわいそうである。もう三日間もわたしと一緒にいるのに、何も食べるものがない。しかし、彼らを空腹のままで帰らせたくはない。恐らく途中で弱り切ってしまうであろう」。
33
弟子たちは言った、「荒野の中で、こんなに大ぜいの群衆にじゅうぶん食べさせるほどたくさんのパンを、どこで手に入れましょうか」。
34
イエスは弟子たちに「パンはいくつあるか」と尋ねられると、「七つあります。また小さい魚が少しあります」と答えた。
35
そこでイエスは群衆に、地にすわるようにと命じ、
36
七つのパンと魚とを取り、感謝してこれをさき、弟子たちにわたされ、弟子たちはこれを群衆にわけた。